アホヌラの黄昏其の壱
十万馬券目撃〜第51回安田記念〜
「ああ…5枠なんて買えねーよ。」 安田記念が終わり、VTRを見てスティンガーとギャラクシーウインが、上位に来ていない事を確認すると、私は溜息をついた。 私の買った枠連の2−8は、只の紙屑になってしまったわけだ。 ターフビジョンには締め切り直前のオッズが映し出されていた。馬連10−17はおよそ1200倍。何てこった。12万馬券だ! 「それにしても、岡部は何をやっていたんだ…」 怒りとも諦めともつかない複雑な感情が胸中にわだかまり、その上十万馬券の衝撃が加わり、私は途方にくれていた。 と、私の前の席でオッサンが携帯電話をかけている、その会話の内容を聞き、私は愕然とした。 「どうするよ。当たってるよコレ。お前の馬券。1200倍。」 オッサンは半ば呆然としながら話をしているようだった。オッサンの手には馬券が握られていた。一点1000円のボックス馬券のようだ。 どうやら人に頼まれて買ったものらしい。素直に喜んでいないのだ。 私の隣に座っていた中年が、これも只ならぬ面持ちでオッサンに声をかけた。 「何!?当たってるって!?」 オッサンは微妙な笑いを浮かべ、後ろの席に座っている我々に馬券を見せてくれた。 一口1000円のボックス馬券。4番ギャラクシーウイン、7番エイシンプレストン、10番ブレイクタイム、12番アグネスデジタル、そして17番ブラックホークの目があった。 それにしても見事なまでの穴狙いだ…。しかも5頭の一点1000円のボックス、合計1万円の掛け金になる。この馬券を注文した奴は只者ではない。 私の心情を察したのか、オッサンはこのような一軒無謀ともいえる馬券を頼まれた経緯を語ってくれた。 「いや〜昨日ある奴にコレ頼まれてよ。普通じゃ買えないわな、こんな無茶な馬券。実を言うとそいつ酔っ払ってたわけよ。そんで適当に穴馬探して選んだのがこの5頭っつーわけだな。本当に運のいい奴だ。馬券ノまないでよかったよ。ホントに。電話してみたらそいつも何だかビビってたよ」 なんと言うことだ。やはり普通の精神状態ではなかったのか。酔拳ならぬ酔予想というやつか!? いずれにしろ、我々は普通に予想しているだけでは、とても10万馬券にたどり着くことは出来ないようである。 それにしても、どうせ荒れるなら、2枠のギャラクシーウインに2着に来て欲しかったなあ…。 |